バレンシアの2021/2022シーズンが大幅な赤字決算で終了
バレンシアの2021/2022シーズンが6月30日で終わりました。クラブの財政面は約6500万ユーロの赤字となりました。これは単年度赤字としては、ピーター・リムがオーナーに就任して以来、最高額となります。
クラブは赤字金額を3500万ユーロに減らすために、6月30日までに選手の売却で3000万ユーロの収入を得ようとしていました(※関連記事「バレンシアの短期債務について」参照)。しかし、1月のアトレティコへのヴァスの売却、シティからバルサに移籍したフェラン・トーレスの育成費500万ユーロ、ロドリゴ・モレーノのリーズ売却のインセンティブ意外に大きな収入を得ることができませんでした。
クラブは、今季の決算前にゲデス、ソレール、ガヤの売却で前述の収入を得ることを望んでいましたが、現在の移籍市場での閉塞感がそれを阻み、結果的に近年最高額のマイナスの数字が帳簿に残ることになりました。ラ・リーガから与えられるモラトリアム(借金返済までの支払猶予)の数日間のうちに選手売却で解決できない場合、バレンシアは新シーズンのチームのための予算をFFP(ファイナンシャル・フェア・プレー)により大幅に減らすことになります。
2021/2022シーズンのバレンシアのチーム総費用は1億2000万ユーロ、給与上限はシーズン当初の約3100万ユーロから2月に約5700万ユーロに増えました(※関連記事「FFPの状況改善により給与限度額が大幅に増加」参照)。しかし、FFPと今回の収支を踏まえてリーガが定めるバレンシアの新シーズンのチーム総費用の上限は5000万ユーロ程度になるとみられています。このため、先日合意に至ったママルダシュヴィリの契約延長も公式発表できない状態にあります。
ピッチーニとヴァスの移籍、チェリシェフ、ブライアン・ヒル、エウデル・コスタ、イライクスらの退団によりチーム総費用が大幅に削減されたことも事実です。そのため、現時点で明らかになっている数字と削減しなければならない金額は異なっている可能性がありますが、それでも大幅に削減されることは間違いありません。
では、今夏のバレンシアは選手の獲得ができないということでしょうか?移籍金が発生する・しないにかかわらず、クラブが誰かを放出しない限り、誰も連れてくることはできません。ラ・リーガの財務管理条項により来季のバレンシアには4分の1ルール──選手放出等で浮いた金額の25%を超える額で選手獲得をした場合、選手登録が認められない──が課されます。つまり、バレンシアが選手の誰かを売却し、移籍金と給与を併せて400万ユーロを浮かせた場合に、選手補強に使える金額はその4分の1の100万ユーロ(移籍金・給与を併せて)となります。
リムが来てからのバレンシアが赤字決算となることは珍しいことではありません。実際、130万ユーロの黒字決算でシーズンを終えた2018/2019シーズンを除いて、クラブの決算は常に赤字でした(2018/2019シーズンはシレセンとネトのトレードがなければ、より多くの黒字で終えていたことも忘れてはいけません)。7年間の累積赤字は約1億7000万ユーロとなります。リムのバレンシアは赤い数字に溺れながら生きています。
ピーター・リムがオーナーになった2014年5月以降の各シーズンの決算
2014/2015シーズン -120万ユーロ(監督:ヌーノ)
2015/2016シーズン -400万ユーロ(監督:ヌーノ、ボロ、ネヴィル、アジェスタラン)
2016/2017シーズン -2710万ユーロ(監督:アジェスタラン、プランデッリ、ボロ)
2017/2018シーズン -3620万ユーロ(監督:マルセリーノ)
2018/2019シーズン +130万ユーロ(監督:マルセリーノ)
2019/2020シーズン -800万ユーロ(監督:マルセリーノ、セラーデス、ボロ)
2020/2021シーズン -3120万ユーロ(監督:グラシア、ボロ)
2021/2022シーズン -6500万ユーロ(監督:ボルダラス)
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