国立高等裁判所の裁判官がバレンシアアカデミーの職員2名を起訴
昨日6/10、国立高等裁判所の判事マリア・タルドンが、エジプト・カイロで開催された国際トーナメントに参加するための遠征中にサルモネラ感染症にかかった当時12歳のカンテラーノに適切な処置をしなかったとして、クラブの2人のスタッフを起訴しました。
タルドン判事は、チームに帯同したメディコのペペ・デ・ロス・サントスと、遠征には参加しなかったものの上司として責任を取る立場にあるとしてバレンシアアカデミーのテクニカルディレクターであるマルコ・オテロの2人に重大な過失があると判断しました。
この12歳の少年を含むバレンシアの選手団は、2019年8月24日~31日にエジプトで開催されたZed Clubs Cupに参加しました。試合開催がない日の夜に、カイロ市内のホテルに滞在していたこの少年は嘔吐、発熱、下痢、激しい胃痛で眠れないため、チームドクターから嘔吐を止める薬をもらったと両親に伝えました。少年の両親はチームの監督を務めるビセンテ・カストロに連絡し、本人に会えるかどうかを尋ねましたが「メディカルチームがイブプロフェンを与えたので心配いりません」と回答を受けました。
翌日、チームはこの少年が前夜に苦しんでいたことを知りながら試合前に通常のトレーニングをさせました。練習後に少年が立ち上がれなかったため、試合中はベンチで横になっていました。
試合後、ホテルに駆け付けた両親が憔悴していた少年を見て驚き、カストロ監督に治療を訴えましたが、カストロ監督は再度心配しすぎないようにと両親に伝えました。
同日、メディコのペペ・デ・ロス・サントスは両親に生理食塩水が足りないので持ってくるようにと依頼しました。頼まれた品と薬を持って来た両親は、ホテルの部屋でひとりで、パンツ一枚で、エアコンフル稼働のとても寒い部屋でベッドに寝ていた少年を見付けました。床には彼の服やタオル、水のボトルが散乱しており、下痢で汚れたパンツも床に落ちていました。少年は目の下に黒いクマがあり、やつれて体重も落ちており、下痢に苦しんでいました。
デ・ロス・サントスは「3日後には回復する単純な下痢だ。他にも下痢になって既に回復した子もいる。医療検査は120ユーロもかかるし必要ない。お金を無駄にするだけ」と両親に伝えました。少年の両親は「お金を払うので医療検査してほしい、せめて息子の部屋に泊まらせてほしい」と主張しました。
クラブは内規の中で「遠征中に保護者が遠征に帯同することは認めているものの、子供たちに干渉したり接触したりすることはできない」と定めています。そして、この内規を理由に両親が少年と一緒にホテルに滞在することを認めませんでした。そして緊急時の連絡先としてデ・ロス・サントスの電話番号を渡されました。
カストロ監督は、マルコ・オテロの指示により両親に選手団から離れるように伝えました。数日後、両親はバレンシアに戻りました。
マルコ・オテロは、少年の両親が医療検査を求めたことについて「自分の子供の症状を大袈裟に言い、特別扱いをするよう求めている」と非難しました。加えて「両親の遠征中の息子に会いに行くという行動は、クラブの内規から外れたものであり、チーム内の他の選手たちに影響を及ぼす」として警告しました。
両親はバレンシアからの報復を恐れ、アカデミーに「心配しすぎた場合は謝罪しますが、理解してほしいのはあのような状態の息子を今までに見たことがないということです」と数回メッセージを送りました。
遠征が終わり、9月1日AM0時に飛行機がバレンシアのマニセス空港に着くまで、両親は少年に会うことは出来ませんでした。そして空港に着いた少年は、何日間も飲食ができなかったため歩くことが出来ず、車椅子で空港から出ました。この時の様子を迎えに来た少年の父は「まるで死体のようだった」と話しています。そして少年の父は彼を車に乗せるとすぐに病院に連れて行きました。
マニセス病院に到着した時、医師たちはすぐに緊急入院の処置を取りました。そして両親に「重度の脱水症状と腎不全を起こしており、より大きな大学病院に連れて行かなければならない」と告げ、少年はすぐに救急車に乗せられ転院することになりました。AM5時、大学病院で両親は少年の容態について「脳障害、心停止、多臓器不全を引き起こし、死に至る可能性もある」と医師から告げられました。
経過観察していた中、PM8時に少年が再度、激しい腹痛を訴えました。CTと超音波検査の結果、少年の十二指腸に穿孔があることがわかり、これを塞ぐために手術する必要がありました。PM10時に手術室に入り、9月2日AM1時に手術は終わりました。
手術を終えた医師は、この少年の症状について「細菌によるものと、イブプロフェン等の医薬品を大量に摂取したことによるものが理由として考えられるが、主に後者の可能性が高いと思われる」と説明しました。実際にはバレンシアのスタッフによって4時間おきに400ml投与されていたことがわかりました。
少年は9月16日まで入院し、12月まで3か月間通院して検査を受け続けることになりました。医師の正式な診断は「サルモネラ感染症にかかり様々な薬を多分に投与した結果、十二指腸潰瘍穿孔と嘔吐による食道炎を引き起こした」というものでした。
少年の両親はこの一件について「怠慢により息子に対する適切なケアがなされず、十二指腸に深刻な影響を与えるまで投薬を行った。穿孔は被告の過失によるもの」と、バレンシアのスタッフを告訴しました。最初の略式裁判では「監督も責任者も、少年がカイロ滞在中に患ったサルモネラ感染症の治療に関する決定の採択に帰することができるとは証明されていない」として両親の訴えは却下されました。
この決定を不服とした両親が昨年5月に控訴し、高等裁判所は重大な過失による民事責任として訴訟手続きを開始しました。
この少年は現在サッカーを続けていますが、既にバレンシアの選手ではありません。市内の街クラブに所属しています。
この件について、クラブは翌11日の未明に公式声明を出しました。
「クラブは、正義とクラブが置かれている司法手続の良好な発展を信頼しており、6月10日金曜日に司法から出された命令に対して適切な申し立てを行う予定です。
当該の大会ではチームの他の選手たちも胃の病気に苦しんでおり、様々な形で充分な対応をする必要がありました。クラブは、この大会で専門家たちが十分な仕事を行ったこと、彼らの仕事に信頼を置いていることを改めて表明します。
クラブは推定無罪の原則を守る必要性があることを主張し、2021年5月に発効した声明を改めて掲載します。
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当該のトーナメントはエジプトで開催され、ヨーロッパとアフリカのクラブが参加したU-13の国際トーナメントでした。このトーナメントではバレンシアおよび他のクラブの選手やスタッフ数名が胃の不調を訴え、治療を受けなければなりませんでした。しかし、参加したクラブのそれぞれのメディカルチームの協力により、そのほとんどのケースが治療され、大きな事故無しに解決することが出来ました。
バレンシアアカデミーは、トーナメントに参加していた選手たちの家族と常に連絡を取り、最も適切な方法で遠征に参加できるようにするためのさまざまな選択肢を提供し、促進していました。
バレンシアアカデミーのチームが参加する全てのトーナメント、公式戦、練習、移動では、常に選手たちが快適に過ごせるようにすることを優先しています。そして近年だけでも100回以上のトーナメントに参加し、何事も問題が起きていないことが証明されています。
バレンシアアカデミーは、現在進行中の全ての司法手続きに関する秘密を尊重し、この公式声明を持ってクラブのすべての声明とします。
最後に、バレンシアアカデミーは当該の選手とその家族が苦しんだ状況を残念に思うとともに、彼が迅速に回復し、再びサッカーを楽しめていることを嬉しく思います」