9月11日15時、突然クラブはマルセリーノ監督の解任を公式発表しました。2年連続でチームをチャンピオンズリーグ出場に導いたバレンシア直近10年の最高の監督は、クラブ創設100周年のメモリアルイヤーに11年ぶりの国王杯のタイトルをもたらしてから、わずか3試合でクラブを去ることになります。

併せて、後任に元スペインU-21代表監督のアルベルト・セラーデスが就任することも発表されています。

この決断はオーナーのピーター・リムの怒りから生まれた独断によるものであり、アニル・マーシー会長とマテウ・アレマニーGMへの相談も無いまま決定されました。

リムの怒りの要因はクラブの補強方針に関するマルセリーノ監督の言動です。マルセリーノ監督が望む補強はリムが望まず、リムが望む補強はマルセリーノ監督が望まず、というジレンマがうかがい知れたのは7月の終わりのことでした。そしてこの時点でリムはマルセリーノ監督を解任しようとしていました。選手たちのマルセリーノ監督擁護の声が強かったことが、リムの決断を一時的に鈍らせたことは間違いないでしょう。

しかし、移籍期間の最終段階で、マルセリーノ監督は会見で自身が望む補強がされないことを皮肉った発言をしました。そしてこの発言を耳にしたリムは、このアストゥリアス人監督の解任を決断しました。

リムが初めにしたことは後任監督探しでした。友人で代理人のジョルジュ・メンデスに薦められたセラーデスをピックアップ。セラーデスをシンガポールに呼びつけ、監督就任の合意が取れたことで、マーシー会長をシンガポールに呼びつけ、マルセリーノ監督の解任を一方的に告げました。

マーシー会長がバレンシアに戻ってきた11日、セラーデスのバレンシア到着の時間に併せたようにマルセリーノ監督の解任が発表されました。この日も週末のバルセロナ戦に向けての練習メニューを準備していたマルセリーノ監督はこの公式発表の30分前に、自身の解任の知らせをクラブ関係者ではなく、馴染みのジャーナリストから聞かされて知ることとなりました。

そして解任発表の1時間後、セラーデスのバレンシア到着とともに新監督就任が公式発表され、さらにその1時間半後には就任会見が始まりました。

マルセリーノ監督はセラーデスのプレゼンテーションが始まるのとほぼ同じ17:40、アレマニーGMのすぐ後にパテルナ練習場に到着しました。11日は19時からの練習予定でしたが、選手たちも1時間以上早く練習場に駆けつけました。一番早かったガヤは16時には駆けつけていました。別施設でリハビリ予定だったピッチーニも練習場に駆けつけたことから、選手たちとマルセリーノ監督の関係の深さがわかります。

ロッカールームでは、マルセリーノ監督は目を潤ませながらお別れの挨拶をしました。

「君たちは私が今まで一緒に働いた中で最高のグループだ。この2年間の成功の本当の立役者は君たちだ。どうか新しいコーチングスタッフと協力して働き続けてもらいたい。こういう形で突然ここを去ることを許してほしい。君たちの幸運を祈っている」

それを聴いていた選手たちの数人は涙をこらえることができませんでした。そして、アレマニーは選手たちに「新監督について私は何も知らされていないため、私から言うことは何も無い。後ほど会長から説明があるだろう」と伝えました。

選手たちとお別れの挨拶を済ませたマルセリーノ監督は、滞在1時間ほどで会見を開くことなくルベン・ウリア(アシスタントコーチ)の車で練習場を去りました。また、アレマニーもその直後に会見することなく練習場を去りました。

その10分後、18:45にセラーデス新監督が練習場に到着。セラーデス到着のすぐ後にマーシー会長もパテルナ練習場入りしました。

セラーデスは自身の挨拶を含めた短いミーティングの後、バレンシアの監督として最初のトレーニングを非公開で行いました。

今回の解任劇について、選手たちもそれぞれのSNSでマルセリーノ監督への感謝のメッセージを載せています。その中でラシン時代にも一緒に働いたことのあるガライは、この決断を下した人間の名前こそ出さなかったものの、強い文章で批判するコメントを残しました。

マルセリーノ監督は2年間で公式戦110試合55勝29分26敗(勝率50％)という成績を残しました。昨季までの2年間のリーグ戦の成績は37勝23分16敗。16敗という数字はマドリー(18敗)よりも少なく、バルサ(4敗)、アトレティコ(11敗)に次ぐ良い数字です。