元バレンシアB監督のニコ・エステベスのインタビュー
元バレンシアBの監督で、現在はMLSのコロンバス・クルーSCでメソドロジー・ディレクターを務めているニコ・エステベス氏が、現地時間今夜に行なわれるバレンシアとの親善試合を控えてインタビューに応えました。
──あなたの故郷のクラブがマフレ・スタジアムにやってくる事をどう思いますか?
「特別な気分です。バレンシア市は僕が生まれた街であり、僕はバレンシアCFをずっと応援しながら育ち、その後は長い間、僕が働いた職場となりました。今回のチャンスにすごく興奮していますし、クラブに居る友人たちの数人とアメリカで会える事をとても楽しみにしています」
「僕がコロンバス・クルーで仕事を始めた最初の年に彼らと親善試合をできるなんてとても信じられない事です。このクラブのアンバサダーとして、バレンシアCFの人たちにこの素晴らしい国、素晴らしい人々、そして素晴らしい僕らのクラブを紹介出来る事を楽しみにしています。
──バレンシアの人々にとってサッカーやクラブは何を意味するのでしょうか?
「バレンシアCFには96年の長い歴史があります。スペインのトップ5のひとつであり14の国内タイトルを獲得しています。そのため、バレンシアCFの名前はヨーロッパ中で知られています」
「新オーナーのピーター・リムやアマデオ・サルボ会長はバレンシアをヨーロッパだけではないすべての国で知られる存在にしたいと考えています。その一環として今回の親善試合があるのだと僕は思っています。彼らはバレンシアCFのブランドを世界中に展開すべく大きな努力をしています」
「バレンシアCFの最も重要なものはそのファンです。彼らは先日、スペインのベストサポーターに選ばれました。全ての試合前に彼らはスタジアムで選手たちの到着を待ち、歌い、チームをサポートします。彼らの存在こそがバレンシアCFにとって最も重要な財産です」
──バレンシア市に住む人々の生活の大きな部分を占めている、という事になるのですね。
「そうですね。彼らにとってクラブは特別です。練習が公開される日には、多くて2000~3000人が練習場を訪れます。ビッグクラブにも拘わらずファンと近い関係を維持し、新たなファンを増やすための良い仕事をしています」
──ファンとして成長したあなたがバレンシアCFで働くチャンスを手にしましたね。
「バレンシア市で生まれ、成長し、バレンシアCFのファンとなり、アカデミーで若い選手たちと共に働き、リザーブチームを指導し、緊急事態ではありましたがトップチームの監督を務められた事は私や、家族、友人たちにとって素晴らしい体験でした。2013年にメスタージャのファンの前でレアル・マドリーと対戦するチャンス(※)をもらえた事を誇りに思います。あの瞬間を体験する事が僕の夢でした」
──その瞬間は、どんな気持ちでしたか?
「その瞬間は仕事に集中していましたし、状況を楽しむ事は出来ませんでした。しかし試合の中で一度だけ──チームが同点に追いつき、3点目を獲りに攻勢に出かけた時にスタンドのファンが歌い始めた時────僕は今メスタージャに居るんだ、と実感しました」
──残念ながら、その試合は2-3で敗れてしまったんですよね。
「ええ、終盤に決勝点を奪われて僕らは敗れました。でもあの試合、僕らの選手たちを誇りに思っています。その前のシーズンにレアル・マドリーはメスタージャから簡単に勝点3を持ち帰って行きました(0-5)。それを踏まえると、僕らは良い仕事をしたと思いますし、ファンもそう感じてくれたと思っています」
「ファンとチームの関係は最高でしたし、本当に素晴らしい時間でした。僕らは良い試合をしましたし、勝つチャンスもあったんです。もちろんレアル・マドリーと戦う時はいつでも負ける可能性があります。あの日、ファンにとって最も重要だった事は僕らが最後の最後まで戦ったという事でした。当時のクラブの状況が良くなかった事もあり、あの試合はクラブにとって重要でした。僕にとって最も重要だった事は勝てなかった事では無く、ファンとチームの間に素晴らしい雰囲気を作れた事です」
──バレンシアの現状を説明して頂けますか?また、それはコロンバスと比べて、どうでしょうか。
「クラブは新オーナーと会長の下で、変化しつつあります。彼らはクラブのブランド力を高めるため、多くの事を変えようとしています。もうひとつの重要な点はクラブのアカデミーに多くのリソースを入れて、世界最高のアカデミーへと成長させようとしている事です。彼らはこのテーマについてもハードワークをこなしています」
「コロンバス・クルーの状況も似ていると言えます。僕らも若い新オーナーを迎え、グレッグ・バーホルターという偉大な監督、アンディ・ラウネインという新たな会長を迎えました。彼らもまた、バレンシアCFと同様に多くの事を変え、ブランド力を高め、アカデミーを向上させようと懸命に取り組んでいます」
──コロンバスに来て最も興奮した事は何ですか?
「グレッグ・バーホルター。彼は非常に知的で明確な考えを持っており、自分のサッカー哲学をチームに導入しようとしています。彼自身、ヨーロッパでのプレー経験も豊富ですし、多くのクラブを研究しています。僕は彼を近くで見られるというこの機会に一番興奮しています」
──あなたの愛するクラブと、現在働いているクラブの親善試合、あなたは引き分けを望みますか?
「いいえ(笑) 僕はいつでも勝ちたい人間です。バレンシアの歴史の一部に居られた事を誇りに思っていますが、今はコロンバスで働いており、このクラブと共に勝ちたいと思っています。でも最も重要な事は、僕たちの独自の哲学をピッチで示す事だと思っています」
「僕はこの試合が、僕たちのファンがバレンシアCFのようなチームを見られる絶好の機会になると思います。彼らもまた、この試合を魅入られる事を誇りにする事が出来ます。僕らはファンを必要としていますし、僕らのファンが素晴らしい雰囲気を作れる事をヨーロッパのチームに見せつけるためにも、スタジアムを満席にしたいですね」