ピーター・リムが3500万ユーロの債務の株式化を容認
ピーター・リムがクラブに対して保有している3500万ユーロの個人貸付金(全額または一部)を株式化することを容認した、と現地メディアが一斉に報じています。この動きにより、今夏の移籍市場でクラブが選手を補強・登録するための財政的な余裕──FFPの枠が大きく拡大する可能性が出てきました。

債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)は、サッカークラブでよく使われる財務手法の一つです。FFPのルールは「負債(借金)が多いクラブほど、チーム作りにお金を使えない」という仕組みです。この手法により、負債をクラブの株式に換えることで借金が減って資本が増えるため、FFPの枠が広がるということになります。
クラブはピーター・リム個人に3500万ユーロの負債を持っていますが、今回、リムが債務の株式化を容認したことで、これを株式にすることができます。簡単に言うと、
- クラブはリムに3500万ユーロの借金がある
- クラブが借金を返済する代わりに3500万ユーロ分の株を新規に発行し、借金と交換でリムの保有とする
- クラブの借金が3500万ユーロ分なくなる
という流れになります。
クラブがこの3500万ユーロをすべて株式化した場合、今季と来季のFFPが1400~1500万ユーロ程度広がる見込みです(※注)。もちろん、3500万ユーロ分のうち必要な額だけを資本化することも可能です。

バレンシアは、2024年のアティトラン不動産開発との契約(新スタジアム隣接地の売却)で得た資金分のFFP枠1690万ユーロが消滅したため、選手人件費の上限(LCPD/給与+移籍金の減価償却+社保等の諸経費):約8000万ユーロという条件で今夏の移籍市場に臨みました。ラ・リーガの承認が降りた段階でLCPDは最大で約9400~9500万ユーロの上限となります。
ただし、このニュースには大きな落とし穴があります。FFPの枠が広がってもクラブがその上限までお金を使うかどうかわからない、という点です。実際のところ、ここ数年のバレンシアのLCPDはFFPの上限を大幅に下回る傾向にありました。そのため、FFP枠に余裕ができたとしてもそれに見合った投資が行われるとは限りません。
また、この動きにより、リムが保有するクラブの株式の割合が増加することを懸念する声も出ています。2025年12月の株主総会の時点で、リム(メリトン・ホールディングス)の持ち株比率は91.56%となっており、今回、その比率がさらに増えることになります。これは、リム以外の小株主にとって自身の持ち分の価値が相対的に下がることになります。一方で、既に90%以上がリムの手にあるため、これが93%になろうと95%になろうと影響力は変わらない、という見方もあります。実際に2025年の株主総会では全ての議案がメリトンの賛成票だけで可決されています。
(※注)
ラ・リーガの規程では資本化される金額を今季と来季の2年に分割して計上します。3500万ユーロをすべて株式化した場合、今季と来季の資本が1750万ユーロずつ増えることになります。しかし、Tribuna Deportivaの記事によると、ラ・リーガの財務管理規程で「資本化によって増えるFFPの上限は最大でも対象額の約80%まで」と定められているそうで、1750万ユーロ×約80%=約1400万ユーロとなるとのことです。
