アリ・ファダルとレスリー・オカイ、バレンシア・アカデミーに在籍する2人のガーナ人プレーヤー
2年前、アメリカのSIMAモントバード・アカデミーからひとりのガーナ人プレーヤーがバレンシアにやってきました。そして今夏、彼と同じ道をたどってきたガーナ人プレーヤーがいます。
アリ・ファダル(20)とレスリー・オカイ(18)。アクラ(ガーナ)からフロリダを経由し、バレンシアへと旅してきた2人のVCFアカデミーのプレーヤーは今夏、パテルナ練習場で再会することになりました。
最初にバレンシアにやってきたのはアリ・ファダルです。2年前にフベニールAに加入し、División de Honorのチャンピオンになりました。昨季はVCFメスタージャに昇格し、21試合に出場。チームの主役ではありませんでしたが、順調な成長を見せ、国王杯:アローサ戦でトップチームデビューを果たしました。
先週のナランハ杯:フランクフルト戦では初めてメスタージャのピッチに立ち、非公式戦ではあるものの勝利を収めました。パテルナからメスタージャに到達した選手の一人です。
2人目は今夏、VCFアカデミーにやってきたレスリー・オカイです。アクラのガーナ・エンゼルス・サッカー・アカデミー、フロリダのSIMAモントバード・アカデミーと、ファダルと同じ道をたどってきた左サイドバックの選手です。
「僕にとってアリは兄のようなものです」と、レスリーは言います。
「バレンシアに行く可能性を知ってすぐにアリに連絡し、何度も電話しました。時には時差を忘れて、夜中に電話してアリを起こしてしまったこともありました」と、笑顔で話しました。
レスリーはパテルナで成長し、2歳上の同胞の足跡をたどりたいと考えています。
一方のファダルは、「レスリーはとても優秀で、だからこそ彼は今バレンシアにいます。ピッチ上のリーダーであり、競争するのが好きで、いつでも勝者のメンタリティを持っている負けず嫌いです。守備面はもちろんですが、特に攻撃面でチームを大いに助けてくれます。彼のドリブルとシュートからは大きなポテンシャルを感じます」と彼を評価します。
ふたりはバレンシアで成長し続けるという夢を共有していますが、そのルーツが決して簡単なものではなかったことを忘れてはいません。
アリ・ファダルはモントバード・アカデミーのドキュメンタリーで「僕は道路も電気もない小さな村で産まれました。2年間は学校に通うお金さえなかったので、家で過ごしていました。母がいつも泣いていたのを覚えています」と語りました。そして彼は貧困からの脱出がサッカーであるとも考えていました。
「学校に行けない間、路上でサッカーをしていました。僕のプレーを気に入ってくれる人がいたらお金をくれるかもしれないし、そうすれば食べ物を買いに行くこともできるでしょう」
そして彼はモントバードのスカウトに見出されてフロリダに連れていかれ、そこからバレンシアのスカウトに見出されることになりました。
ふたりとも自分のルーツを大切にしています。ファダルは、バレンシアに在籍してからの2年間、故郷の村に寄付するためのスポーツグッズを持ち帰っています。
「毎年、夏になると母や姉妹に会うためにガーナに戻ります。僕はいつもバレンシアのチームメイトたちに、ガーナの地域コミュニティやアクラのアカデミーに寄付するためのシューズやトレーニングウェアをもらえないかと相談しています。クラブも僕に理解を示してくれて、スポーツ用品を提供してくれています」
「僕には、ガーナの地域の若者たちに対して責任があります。彼らは僕に注目してくれています。バレンシアも責任のある素晴らしいクラブです。僕にとって、クラブのスポーツ用品を自分の故郷に提供し、支援できることは光栄なことです」
ファダルはガーナに帰るたびに、故郷の人たちから愛されていると感じています。
「僕が帰るたびに、皆が幸せそうにしてくれるので僕も幸せです。友達は皆、"アリ、俺たちはいつも一緒だ"と言ってくれますし、バレンシアが試合を戦うたびに、バレンシアを応援していると言ってくれます。今では、僕の地域の誰もがバレンシアのファンです」
ラバディ出身のレスリーは、幼少時から学問に取り組むことを強く言われ、外で遊ぶことがほとんど許されない少年でした。彼のサッカーへの愛情は、フェンスの向こうでプレーしていた兄たちの姿を見て芽生えたものでした。
「ある日、勇気を出してフェンスを越え、ピッチに立つ感覚を体験しました」
この反抗的な行動が、家族から反対されたにもかかわらず彼のサッカーの旅の始まりとなりました。
「祖母が学業に真剣に取り組めばサッカーとの両立を許してくれると言ったので、僕はその通りにしました」
レスリーの家も貧しく、サッカー用のシューズを買う余裕がありませんでした。彼がガーナのサッカー・アカデミーの入団テストを受ける時、彼の故郷ラバディのコミュニティがお金を集め、彼の初めてのサッカーシューズを購入してくれました。
「両親は手元にあるもので精一杯なんとかしようとしてくれましたが、良いスパイクシューズを買う余裕がありませんでした。そんな中、地域の人たちがお金を集めてシューズを買ってくれたおかげで、より多くのチャンスを得られるアカデミーに入学することができました。あのことは決して忘れられません。僕にとっては単なる靴以上のものでした。皆が僕の可能性を信じてくれた証でした」
そして2021年、レスリーは故郷のラバディを離れ、フロリダに行きました。
「夢を追いかけてアメリカに渡ったのは、僕にとって大きな出来事でした。地域の皆もとても喜んでくれました。モントバードは僕にしっかりとした学業の基盤を与えてくれました。加えて、僕のスポーツ技術の向上をサポートしてくれました」
モントバードでのレスリーは、リーダーシップを発揮しチームを何度も勝利に導きました。アカデミーでの最終年にはモントバード・アカデミーの年間最優秀学生アスリート賞を受賞しました。
「僕は決して裕福ではありませんが、モントバードで、そしてこれまでの人生で得た経験、知識、思い出は豊かであると言えます。そのことに感謝しています」
レスリーもまた、ファダルと同様に社会貢献に力を入れています。
「故郷の恵まれない子供たちにスポーツや学業を学べる機会を提供しています。将来的にはガーナに学校を建てることを夢見ています」
モントバードに在籍している間もレスリーは、可能な限りのボランティア活動に参加したり、若い学生を指導したりすることを楽しんでいました。モントバードのコーチであるデイヴィッド・グレイドンは「レスリーはモントバード・アカデミーが掲げる人間・学生・アスリートとして重視する価値観を並外れたレベルで体現しています。」と評価しています。
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